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一九七〇年代生まれの在日朝鮮人三世である著者の呉世宗氏は、民族と世代によって私とは二重に隔絶した読者として金時鐘の作品と出会い、長い時間をかけて向き合ってきた。本書を読んでまず打たれるのは、金時鐘のテクストを前にして著者が示す、徹底的に方法的であろうとする態度である。著者は直観的な印象批評を禁欲的なまでに排しつつ、金時鐘を<読む>ための特別な解読装置を、労を厭わず、周到に、緻密に組み立ててゆく。(鵜飼哲「金時鐘を〈読む〉ということ―呉世宗『リズムと抒情の詩学』のために」より) 金時鐘の長編詩『新潟』における「短歌的抒情の否定」の現れを明らかにするために、「リズム」と「抒情」を主要なキーワードに、一連の関連するテクストを検討。 一見自然な感情の発露と見える「抒情」が、「リズム」概念の議論を通じて形作られたこと。リズムと抒情の近代化が、日清戦争という時代的背景のもと、ナショナリスティックに再編制されていったこと。リズムと抒情が、形式が内容に枠を与え、内容が形式を規定する、というように循環するものとして統合されたこと。以上三つのポイントから、近代的なリズムと抒情は、存在論的に共同体を立ち上げると共に、認識も規制したことを明かし、日本固有な結合の仕方、及びその存在と認識に及ぼす影響力こそが、金時鐘が批判的に捉える「短歌的抒情」であると結論づける、渾身の力作。
目次
序章 金時鐘を“読む”ということ―呉世宗『リズムと抒情の詩学』のために序章 「短歌的抒情の否定」が目指すもの―「まみれることのない純粋な短歌」から、「垢じまない抒情」へ第1章 「短歌的抒情」の形成史第2章 『乳色の雲』から『再訳朝鮮詩集』へ第3章 小野十三郎と金時鐘第4章 初期詩篇論―『長篇詩集新潟』に至るまで第5章 “道”と自己第6章 意志について第7章 自己変容を通じた世界の開示―浮上する歴史と他者の生結論 リズムと抒情の詩学



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